即書評

外来種問題の入門書:終わりなき侵略者との闘い【感想】

【終わりなき侵略者との闘い~増え続ける外来生物~】は2017/7/11発売の五箇公一さん(著),THEPAGE編集部(編集)の書籍です。

終わりなき侵略者との闘いの感想・ポイント

外来種に関することがまとまっている良書だと思います。
写真も程よく入っており、読みやすいし、イメージしやすい書籍でした。

「そもそも、外来種って問題なの?」
という視点もあり、客観的なところもよかったです。

また、こういう書籍はどうしても失敗事例が多く紹介されますが、駆除に成功した事例も紹介されています。
関東のカナダガン、沖縄のオオヒキガエル、小笠原諸島の聟島、媒島、姫島のノヤギ、弟島のウシガエル、南西諸島のウリミバエは駆除に成功しています。

日本での外来生物の定義

環境省は、外来生物とは「明治時代以降に日本に導入された生物種」としています。

終わりなき侵略者との闘いより

なぜ、「明治時代以降」かというと、開国したことにより、人や物の移動が活発になり、その過程で様々な生物が持ち込まれたと考えられるからです。

それ以前の生物も外来生物としてしまうと、稲作文化到来と共に大陸からきたと推測される、スズメ、イスタデ、チガヤ、エノコログサ、タマガヤツリなども外来生物になってしまいます。

ちなみに、モンシロチョウは奈良時代に大根や菜の花などに紛れてやって来ました。
シロツメクサ(クローバー)も1800年代に入ってきた植物です。

自分自身、外来種を研究する身として、所詮は自分の好きな生き物を守りたいだけの学者のエゴだろう、と側から思われても仕方がないと感じることがあります。
〜中略〜
結局、なにが起こるかわからないという予測不能性こそが大きなリスクと捉えて、我々の生物多様性に対する理解が少しでも進むまでは、現状維持を図ることが最善策と考えられます。
とすれば、やはり、外来種をこれ以上増やさないことが賢明であり、外来種が増えにくい環境をつくることが先決、と結論されるのではないでしょうか。

終わりなき侵略者との闘いより

セアカゴケグモはそれほど危険ではない

この毒グモは、獲物を捕獲するための毒牙を備えており、人間が咬まれた場合、かなりの痛みが生じます。その毒の単位量あたりの毒性(1mLで殺せる動物の体重)は、キングコブラの毒性よりも高いとされます。
幸い、1匹あたりの毒の量が極めて微量であること、クモの毒牙自体も極めて短いため、人間の血管に直接毒を注入することができないことなどから、このクモに咬まれたからといって、人間の命にかかわるほどの影響が出ると言う心配はありません。
〜中略〜
原産地とされるオーストラリアでは、セアカゴケグモのぬいぐるみやアクセサリーが販売されており、むしろ愛すべきキャラクター扱いされています。

終わりなき侵略者との闘いより

もちろん、体力のない方や乳幼児などが咬まれた場合の健康リスクを想定する必要はありますが、必要以上に毒性を強調することは生物学的に意味はないとのことです。

ちなみにセアカゴケグモのぬいぐるみは日本でも売ってました。

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でも、ヒアリは危ない

最近で言えばヒアリが盛り上がっています。
ヒアリは割と危ないみたいです。

見かけても触らないようにしましょう。

実際に、ヒアリが侵入して分布が広がっている北米では、毎年8万人が刺傷被害に遭い、うち約100人が死亡していると報告されています。

終わりなき侵略者との闘いより

両生類の危機は日本発信?

近年、世界各地でカエルやイモリなどの両生類が急速に減少していることが、生態学的に問題とされています。そして、その原因のひとつとされるのが、「カエルツボカビ症」と言う両生類特有の進行感染症の流行です。

終わりなき侵略者との闘いより

カエルツボカビ菌の遺伝的多様性に加えて、日本国内に置いてこれまでにカエルツボカビ症による大量死の事例がないこと、感染実験において日本の両生類は菌に感染しても発症しないことから、本菌の起源は日本を含むアジアにあり、日本国内の両生類は、本菌と長きにわたる共進化によって、本菌に対する抵抗性を獲得していると結論されました。
つまり、カエルツボカビ菌は、日本に侵入してきたのではなく、日本から世界にばらまかれたのです。

終わりなき侵略者との闘いより

日本は、1950~1980年まで国内で養殖したウシガエルを欧米に輸出していました。
このことも世界にカエルツボカビ菌がばらまかれた要因の一つだと考えられます。

また、エコツーリズムやフィールドトリップなどで観光客が熱帯林の奥地に入ることもカエルツボカビ菌が広まった一因だと考えられています。

悪影響なのはその生き物だけではない

外国産のダニが国内で分布を拡大すれば、日本固有のクワガタナカセの遺伝的多様性が撹乱され、クワガタムシーダニの共種分化の歴史も書き換えられることになります。
もちろんクワガタナカセ自体は、クワガタムシにとっては、いてもいなくても大した影響のない存在ですが、生物移送に伴って目に見えない微小な生物の進化の歴史にも異変が生じることを、クワガタナカセは教えてくれます。

終わりなき侵略者との闘いより

「ブラックバスが増えて、在来種が食べられるだから、生態系を脅かす」
のような単純な影響もありますが、悪影響を及ぼす可能性があるのは、その生き物だけではありません。

外来のクワガタが入って来た場合、それに付いているダニも外来種なのです。
「そのダニが在来種に付いたらどうなるのか、在来のダニにどんな影響があるのか?」
というのも考える必要があります。

外来種に関する負のループ

例えば、ノヤギを駆除したことで、固有の植物種に対する食害が軽減され、在来植生が回復すると期待されていたのに、逆に外来雑草や外来樹木がヤギの捕食圧から解放されて、いっそう増えてしまいました。クマネズミを減らしたら、餌不足になったノネコが固有鳥類を襲うようになってしまいました。逆に、ノネコを減らせばクマネズミが増えてしまいます。

終わりなき侵略者との闘いより

ところで小笠原の父島では、近年、アフリカマイマイはかつてほど頻繁に見られなくなりました。アフリカマイマイの数が減った主な原因は、ニューギニアヤリガタリクウズムシという天敵の登場と考えられます。

終わりなき侵略者との闘いより

アフリカマイマイは、在来のカタツムリよりも巨大です。

そんな巨大な貝殻を使うようになったヤドカリも巨大化しています。

アフリカマイマイが減ると、巨大な貝殻も減るため、巨大化したヤドカリにとっては、自分にあった貝殻が見つからないという残念な結果になっているようです。

また、アフリカマイマイが減っていくと、ニューギニアヤリガタリクウズムシが在来のカタツムリを襲うのも容易に想像できますよね。

生き物たちは密接に関わっており、その関わりの中に外来種が入り込むと負のループが生まれることがあります。

雑種の凶暴化

このキラー・ビーは、アメリカでは「Africanized honeybee(アフリカ化ミツバチ)」と呼ばれており、その正体は、人間がつくり出したミツバチの雑種系統なのです。

終わりなき侵略者との闘いより

2016年5月にアメリカでミツバチの大群に襲われた男性が死亡しました。
1000箇所以上刺されていたそうです。

この男性を襲ったのがアフリカ化ミツバチです。

人間は、熱帯のブラジルでも活発に飛び回るミツバチを作るためにセイヨウミツバチとアフリカミツバチのハイブリッドを作りました。
このハイブリッドミツバチがアフリカ化ミツバチで、かなり凶暴です。

この凶暴なミツバチが世界に広まる可能性があると考えるとゾッとしますよね‥

在来のカメより多い、外来のカメ

2016年の春、環境省が、国内で野生化しているミシシッピアカミミガメ(以下アカミミガメ)の個体数は790万匹に上るとする推定値を発表しました。

終わりなき侵略者との闘いより

「790万匹って多いの??」
と感じるかもしれませんが、在来種のニホンイシガメの推定値が100万匹です。
在来種の約8倍ということです。

かなり多いですよね。

外来種全てを悪としない人間

例えば、絶滅に瀕する生物種の集団に別の地域からの集団を移植して、遺伝的多様性を回復させて、絶滅を回避するという対策が取られることがあるのです。

終わりなき侵略者との闘いより

集団内での遺伝子多様性が低下した北米のフロリダパンサーの遺伝子の多様性を回復させるために、テキサス州に生息する近縁亜種を導入し多様性を回復した事例があります。

それ以外にも、中国産のトキと日本のトキを交配させ集団を維持を目指したこともあります。(日本での出来事なのでご存知かもしれませんが、これは失敗に終わりました。しかし中国産トキを放鳥する国家事業は継続されています)

終わりなき侵略者との闘いの感想まとめ


読みやすい、わかりやすい、入門にぴったりの書籍でした。

外来種の問題に触れたい方には、まずはこの書籍をオススメします。

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